いま、動画の世界では何が流行っているのだろう。
そう思って調べ始めたのですが、数字を見ているうちに、もっと面白いことが見えてきました。
そもそも私たちは、同じインターネットを見ていない。
YouTubeを見る人、Xを見る人、Instagramを見る人、TikTokを見る人。それぞれ集まる人も、そこで求めている情報も違っています。
日本では、どのサービスにどれくらい人がいる?
まず規模を見てみます。
月間アクティブユーザーが公表されているもの
- LINE:約1億人
2025年12月末に国内MAU(1か月に一度以上LINEを起動したユーザーアカウント数)が1億を突破し、2026年3月末時点でも1億人規模となっています。 - TikTok:約4,950万人
2026年にTikTokが公表している日本国内の月間利用者数です。
LINEは、日本の人口の8割を超える規模です。
そして注目したいのがTikTok。
もはや「一部の若者が使うアプリ」と考えるだけでは、その実態を捉えきれない規模になっています。
広告で到達可能とされる人数
一方、次の数字は各プラットフォームの広告ツール上で示された「広告で到達可能な人数」の一例です。
- YouTube:約7,850万人
- X:約7,120万人
- Instagram:約6,320万人
- Facebook:約1,650万人
- Threads:約1,300万人
いずれも2025年後半の日本について、各社の広告ツールのデータをまとめたDataReportalの「Digital 2026: Japan」に基づく目安です。
ここは注意が必要です。
広告到達可能人数は、月間アクティブユーザー(MAU)そのものではありません。
広告設定や対象年齢、プラットフォーム側の計算方法の変更などによって数字は変動します。特にXについては、広告ツール上の数値が短期間でも大きく動く可能性があるとして、DataReportal自身も慎重な解釈を求めています。
したがって、これは厳密な「利用者数ランキング」というより、各サービスの日本での規模感を見るための一つの目安と考えるのがよさそうです。
それでも、YouTube、X、Instagramが非常に大きな情報空間になっていることは見えてきます。
同じSNSでも、集まっている人が違う
2026年8月17日に発表された全国15~59歳、7,946人を対象とした調査を見ると、面白い違いがあります。
X
- 音楽・ライブ
- ゲーム
- インターネット
- ファッション・美容・コスメ
- 音楽・ライブ
- 料理・菓子作り
TikTok
- ファッション・美容・コスメ
- 音楽・ライブ
- ショッピング
- ドライブ・ツーリング
- スポーツ・運動
以上が、それぞれ利用率の高い趣味として挙がっています。
別の調査では、利用目的にも違いがあります。
Xでは「ニュースや話題になっていることを調べる」、Instagramでは「有名人や知人の動向を見る」、TikTokでは「暇つぶし」、Facebookでは「知人の動向を見る」という使われ方が目立ちます。
もちろん年齢や男女比の影響もあるため、これだけで利用者像を決めつけることはできません。
しかし、媒体ごとに小さな「社会」ができていることは見えてきます。
若者は本名で活動する?
ここも少し意外でした。
NTTドコモ モバイル社会研究所の「2025年 SNS利用者行動調査」では、Instagramを利用する10~20代について、実名アカウントを利用する人が半数程度いるという結果が出ています。
同じ調査では、Instagramを利用する10代の56.4%が複数アカウントを使用しています。
一方、Xでは10~20代の半数以上が複数アカウントを利用し、10~50代では「すべて匿名」の利用者が7~8割。TikTokでも各年代で「すべて匿名」が約8割という傾向が確認されています。
あくまで一つの調査結果ですが、
若者が単純に「実名化」したというより、実名・匿名・複数アカウントを、媒体や目的によって使い分けている。
こちらのほうが実態に近そうです。
Threadsって何?
Threads(スレッズ)は、FacebookやInstagramを運営する米国Meta社が2023年に始めたSNSです。
写真や動画の比重が大きいInstagramに対して、Threadsは文章と会話を中心にしたSNS。
簡単にいえば、
「Instagramとのつながりを持ちながら利用できる、Xに近い性格を持つSNS」
と考えると分かりやすいでしょう。
2026年6月、MetaはThreadsの世界の月間アクティブユーザーが5億人に達したと発表しました。
日本については、2025年後半のMeta広告ツール上で約1,300万人への広告到達が可能とされていました。ただし、これもMAUではなく広告到達可能人数です。
日本ではまだXほど一般的とはいえませんが、今後を見るうえでは無視できない存在になっています。
では、このサービスは「どこの国」のもの?
これも知っておいたほうがよさそうです。
| サービス | 主な運営企業・背景 |
|---|---|
| YouTube | Google/Alphabet(米国) |
| X | X Corp.(米国) |
| Meta(米国) | |
| Meta(米国) | |
| Threads | Meta(米国) |
| TikTok | ByteDance系。中国の起業家によって設立された企業を起源とし、日本サービスの運営主体はシンガポール法人 |
| LINE | LINEヤフー(日本)。親会社AホールディングスはSoftBankと韓国NAVERが50%ずつ出資 |
TikTokは特に構造が複雑です。
ByteDanceは中国の起業家によって設立されましたが、日本国内のTikTokサービスについてはシンガポール法人TikTok Pte. Ltd.が運営主体となり、日本法人が実務的な提供・運用を支援しています。
TikTokの説明では、日本のユーザーデータはシンガポール、マレーシア、アイルランド、米国などに保管されています。
LINEヤフーについては、日本企業ですが、その親会社AホールディングスはSoftBankとNAVERが50%ずつ出資する合弁会社です。
ここで注意したいことがあります。
外国企業であること、データが外国に保存されること、情報が漏えいすることは、それぞれ別の問題です。
一緒にしてはいけません。
実際に起きたLINEの情報漏えい
その違いを考えるうえで分かりやすいのが、2023年に発生したLINEヤフーへの不正アクセスです。
韓国NAVER Cloud社の委託先でもあった企業の従業者PCがマルウェアに感染したことを契機に、NAVER Cloudと旧LINE側で共通利用していた認証基盤などを経由して、LINEヤフーのシステムへ不正アクセスが行われました。
最終調査では、ユーザーに関する個人データについて、漏えいの「可能性を含む」件数が302,980件、うち日本ユーザーが130,192件とされています。
ただし、銀行口座、クレジットカード情報、LINEアプリのトーク内容は、この件数には含まれていません。
ここで問題だったのは、単純に「外国企業と関係があったから」という話ではありません。
企業をまたいだネットワーク、認証基盤、委託先を含めたセキュリティ管理をどう行うかという問題でした。
LINEヤフーはその後、NAVER・NAVER Cloudとの不要な通信の遮断や、委託関係・システム利用の縮小、終了などを進めています。
アメリカはなぜTikTokを規制したのか
TikTokについては、米国がかなり強い対応をとりました。
2024年、米国では「外国の敵対勢力が支配するアプリ」を対象に、一定の資本分離が行われなければ、アプリストアでの配布やインターネットホスティングなどを制限する法律が成立しました。
この法律ではTikTokと親会社ByteDanceが明示的に対象とされました。
背景にあったのは、
- 米国人の大量の個人データ
- 推薦アルゴリズム
- 外国政府から影響を受ける可能性
などをめぐる国家安全保障上の懸念でした。
ところが、その後状況は大きく動きます。
2026年1月、米国向けTikTokを運営するTikTok USDS Joint Venture LLCが設立されました。
主要出資者は、
- Oracle 15%
- Silver Lake 15%
- MGX 15%
- ByteDance 19.9%
などです。
米国投資家が過半数を保有し、米国ユーザーのデータ、アルゴリズム、サイバーセキュリティなどを新会社側で管理する仕組みが採られました。
さらに2026年7月16日、米司法省法律顧問局(OLC)は、この新しい米国向けTikTokについて、USDS Joint VentureがByteDanceから独立して機能し、米国投資家が過半数を保有していることなどを踏まえ、従来の連邦政府端末向けTikTok禁止法の対象には当たらない、という法的解釈を示しました。
つまり、
「TikTokを安全保障上の問題として規制する」
→「一定の資本分離を求める」
→「所有やデータ管理、アルゴリズム管理の仕組みそのものを変える」
というところまで進んだわけです。
これはかなり興味深い動きです。
しかし、TikTokの問題が消えたわけではない
この記事を書いているのは、2026年8月21日。
米司法省は、子どもの個人情報保護法COPPAをめぐる訴訟について、TikTok、ByteDanceなどと4億ドルの和解に達したと発表しました。
TikTok側は3億ドルを支払い、さらに過去のMusical.lyに関する同意判決が取り消された場合に1億ドルを支払う内容です。
なお、これは訴訟上の和解であり、この記述だけをもって司法判断によって違反責任が確定したと捉えるべきではありません。
ここから見えるのは、米国が、
国家安全保障としてのデータ管理
と、
個人、とりわけ子どものプライバシー保護
を別の問題として扱っていることです。
ここから私たちは何を学べるのか
1.自分のタイムラインを「世論」だと思わない
Xで大騒ぎになっていても、Instagramでは誰も話していない。
TikTokでは全く別のものが流行っている。
しかもアルゴリズムは、自分が興味を示したものをさらに見せてきます。
私たちは「世の中」を見ているのではなく、自分向けに選ばれた世の中を見ている可能性があります。
2.発信したい相手によって媒体を変える
若い人に新しく知ってもらうのか。
趣味の人とつながるのか。
専門的な情報を探している人に届けるのか。
目的によって入口は違います。
「流行っているSNSだから使う」より、
誰に届けたいのかを先に考える。
そのほうが合理的です。
3.便利さと引き換えに、何を渡しているのか知っておく
SNSの多くは無料です。
しかし無料だから、何の交換も行われていないわけではありません。
閲覧履歴、検索、興味関心、位置に関する情報、広告への反応など、サービスによってさまざまなデータが収集・利用されます。
だからといって、
「SNSは怖いから使わない」
という話でもありません。
運営会社はどこなのか。
どんなデータを扱っているのか。
公開してよい情報なのか。
その程度を意識するだけでも、使い方は変わります。
かつては、テレビで何が流行っているかを見れば、「世の中の流行」がある程度見えました。
しかし2026年。
あなたが見ているネットと、隣の人が見ているネットは、もう同じではありません。
そして私たちは情報を見るだけでなく、自分自身についての情報も、その世界に少しずつ渡しています。
だからこそ、
どこを見るか。
どこで発信するか。
何を渡すか。
この三つを、自分で選ぶ時代になっているのだと思います。



