ガンジーの言葉から考える動物との関係

動物

「その国の偉大さと道徳的発展の度合いは、その国における動物の扱い方によって判断できる」
――マハトマ・ガンジー

この言葉は、単なる動物愛護の話にとどまらず、国や文化ごとの価値観や倫理観が、どのように動物との関係性に表れるかを示唆しています。

では、この言葉が発せられた背景を見てみましょう。

インドにおける動物観

ガンジーが生きたインドでは、ヒンドゥー教をはじめとする宗教の影響が強く、動物との共存が倫理的に重視されていました。特に牛は神聖視され、食べることが禁じられている地域も多くあります。また、ジャイナ教では「アヒンサー(非暴力)」の理念が貫かれ、極端な場合、虫一匹を踏まないよう配慮する人々もいます。

インドの宗教観は、多神教の要素が色濃く、神々がさまざまな動物の姿をしていることが特徴的です。たとえば、ガネーシャ神は象の頭を持つことで知られ、知恵や学問の神として広く信仰されています。さらに、ハヌマーン神は猿の姿をしており、忠誠心や力を象徴する存在です。

このように、インドでは動物が神聖なものとして崇拝されると同時に、人間の精神的な成長を促す象徴としても重要な役割を果たしてきました。

しかし、現代のインドでは経済発展とともに畜産業が拡大し、動物に対する扱いも多様化しています。都市部では牛が野良化し、交通の妨げとなることもあります。また、一部では宗教的理由で動物を保護しようとする人々と、経済活動のために動物を利用しようとする人々の間で対立が生じることもあります。密猟や違法な動物取引も問題視され、動物の権利保護運動が活発に行われるようになっています。

インドの動物保護施設

現代のインドでは、動物保護活動も活発に行われており、多くの施設が動物の救助やリハビリテーションを行っています。

  • ヴァンタラ野生動物救助センター(グジャラート州): インド最大の野生動物救助センターで、2,000種以上、15万匹以上の動物を保護。
  • The Sanctuary, ECR(タミル・ナードゥ州チェンナイ): 個人運営の施設で、特にウマ科の動物を中心に保護。
  • Animal Aid Unlimited(ラージャスターン州ウダイプル): 路上の動物を救助し、治療を行う非営利団体。
  • Friendicoes SECA(ハリヤーナー州グルガーオン): 犬、猫、馬、牛、ヤギ、ラクダ、猿など、多様な動物を保護。
  • Wildlife SOS(ウッタル・プラデーシュ州アーグラ): ゾウの保護活動を行い、虐待を受けた動物のリハビリテーションに尽力。

これらの施設は、動物の救助、治療、保護を行いながら、インド国内の動物保護意識の向上にも貢献しています。

ガンジーの生涯と思想

マハトマ・ガンジー(1869-1948)は、インド独立運動の指導者であり、「非暴力・不服従」の理念を掲げたことで知られています。彼は英国統治下のインドで育ち、法学を学ぶためにイギリスへ渡った後、南アフリカで弁護士として活動しました。この地で人種差別を経験し、非暴力抵抗運動の基盤を築くことになります。

ガンジーは宗教的にも深い影響を受け、ヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教、イスラム教、キリスト教などの思想を学びながら、自らの哲学を形成しました。彼の「アヒンサー(非暴力)」の思想はジャイナ教やヒンドゥー教の影響を強く受けており、すべての生命に対する敬意を重視する考え方が根底にあります。

ガンジーにとって、動物をどのように扱うかは、人間の道徳的な成熟度を示す指標でした。彼はベジタリアンであり、動物を殺さないことが人間の倫理的な成長につながると考えていました。彼のこの思想は、現在のインドにおける動物保護の動きにも影響を与えています。

第1回目の気づき

ガンジーの言葉を深く考えてみると、動物の扱いは単なる愛護や倫理の問題にとどまらず、社会全体の価値観や発展の度合いを映し出すものだということがわかります。動物をどのように扱うかは、その社会がどれほど他者や弱者に配慮できるか、またどれほど調和を大切にしているかを示すバロメーターとも言えるでしょう。

次回は、ガンジーの思想が現代インドにどのように影響を与えているのか、そして私たちがそこから何を学べるのかをさらに深掘りしていきたいと思います。

一般社団法人東西交流フォーラム

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