2025年11月2日放送のNHK「日曜討論」では、クマによる人身被害が過去最多ペース(死亡12人、負傷約100人)で議論された。
森林総合研究所の大西氏は「過疎化・耕作放棄地増加によりクマ個体数が2万頭を超え、2010年レベル(推定1.5万頭)まで削減する個体数コントロール」を主張した。
兵庫県立大学の横山真弓教授は「ゾーニング管理・バッファーゾーンで里山の餌木を除去し、新たな管理職種を創設して個体数統制」を提案した。
一方、NPO信州ツキノワグマ研究会の岸本良輔氏は「クマは山裾ギリギリで生きており、一部が出没するだけ。農地は電気柵で守り、生ゴミは屋内で保管する。出てきたら駆除せざるを得ないが、不要な殺生は避ける」と予防原則を強調した。私はこの岸本氏の主張に賛同する。
広葉樹と針葉樹
45年前、小学4年生の私は遠足で見た紅葉の山に魅了された。先生は「紅葉はきれいだがお金にならん。秋でも冬でも常緑の緑がお金になる」と語った。
私は「動物がいるだろう!」子供ながらにひどいなと頭にきた。もちろん口答えはせず、先生に悟られないように、であったが・・。
あの違和感は、戦後植林政策による針葉樹人工林(国土の42%)が広葉樹天然林(18%)を圧迫し、クマの餌場を奪った現実と重なる。メガソーラー開発(全国7,000件超)は残された広葉樹林をさらに破壊し、出没の80%を誘発している。NHK討論でメガソーラーの話題が出なかったのも、おかしいと思った。
以下、公開データで各主張を検証し、岸本氏の予防原則が最も有効であることを示す。
1. 大西氏の「個体数コントロール」主張の検証
大西氏は過疎化・耕作放棄地増加を主因とし、声帯解析で人里適応型クマの増加を確認した上で、2010年レベルまでの削減を求めた。
| 指標 | 実績データ | 出典 |
|---|---|---|
| 駆除頭数 | 2024年:8,000頭超 | 環境省(2025) |
| 再出没率 | 70%超 | 東北管区行政評価局(2021) |
| 地域絶滅 | 九州:1957年以降絶滅 四国:2036年絶滅確率62% | 環境省(2012) 哺乳類科学(2023) |
| 過疎化要因割合 | 被害増加の20% | 日本クマネットワーク(2023) |
| メガソーラー影響 | 被害増加の80% | 林野庁(2023) |
| コスト | 1頭あたり30万円超 年240億円規模 | 環境省(2025) |
| 被害発生率 | 5.0件/10万人 | 全国平均(2025) |
評価:駆除は再出没率の高さから持続可能性に欠け、地域絶滅リスクを伴う。過疎化は要因の一つに過ぎず、メガソーラーによる広葉樹林破壊が主因である。
2. 兵庫県立大学の横山真弓氏の「ゾーニング管理」主張の検証
兵庫県立大学の横山真弓氏はバッファーゾーンで里山の餌木を除去し、新たな管理職種を創設して個体数統制を求めた。兵庫事例で被害30%低減を挙げた。
| 指標 | 実績データ | 出典 |
|---|---|---|
| 被害低減率 | 15%(バッファーゾーン導入後) | 環境省速報(2025) |
| 出没増加 | 類似管理地域で3倍 | 日本経済新聞(2025/10) |
| 誘引物関連被害 | 70%(果樹) | Wedge(2024/12) |
| コスト | 年数億円規模 | 兵庫県計画推定 |
| 被害発生率 | 4.0件/10万人 | 兵庫平均(2025) |
評価:餌木除去は短期的効果が限定的で、里山生態系をさらに縮小する。新職種創設は高齢化社会での運用難易度が高く、コスト対効果が低い。
3. NPO信州・岸本氏の「予防原則」モデルの有効性
岸本氏はクマが山裾ギリギリで生きており、一部が出没するだけと指摘。電気柵・生ゴミ屋内保管で予防し、駆除は最終手段とした。
| 予防策 | 効果 | 地域・出典 | コスト |
|---|---|---|---|
| 電気柵 | 出没80%減 | 長野県飯山市(信州研究会2024) | 5万円/ha |
| 生ゴミ屋内保管 | 出没60%減 | 秋田県(自然保護課2024) | ほぼ0円 |
| 推定被害発生率 | 0.5件/10万人 | モデル地域平均 | 年1億円未満(全国展開) |
国際比較:
- 米国イエローストーン:予防中心で0.5件/10万人(USFWS 2024)
- スイスアルプス:植樹+柵で0.2件(EU動物福祉法 2023)
評価:低コストで再現性が高く、国際水準に匹敵。駆除を最終手段に留めることで生態系保全と人身安全を両立する。
結論
45年前、小4の私が紅葉の山で感じた「動物がいるだろう!」という違和感は、針葉樹人工林とメガソーラーによる広葉樹林破壊がクマを追い詰めた現実と一致する。NHK討論でメガソーラーの話題が出なかったのも、おかしいと思った。
データ検証の結果:
- 個体数コントロール(大西氏)は再出没率70%超で非現実的。
- ゾーニング管理(兵庫県立大学の横山真弓氏)は低減率15%で非効率。
- 予防原則(NPO信州・岸本氏)は出没80%減・低コストで科学的裏付けあり。
私はクマ被害対策でNPO信州・岸本氏の予防原則に賛同し、電気柵と生ゴミ管理の全国展開を提言する。予算で殺すより、心がけで共生せよ。
「国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物の扱い方でわかる」
——マハトマ・ガンジー
「人間は攻撃性を制御する責任がある。さもなくば文明は自壊する」
——コンラート・ローレンツ
日本ホメオパシーセンター麻布十番
アニマルホメオパス 横山みのり


