世界には、名前は聞いたことがあっても、実はあまり知られていない国がたくさんあります。
「バーレーン」もその一つかもしれません。
突然ですが、皆さんは「+973」という国番号をご存じですか?
実はこれ、中東の小さな島国 バーレーン王国 の番号なんです。
先日、この番号から着信があり、ふと、私にとって、とても大切なある方のことを思い出しました。
真珠の国、バーレーン
バーレーンは、サウジアラビアやカタールに囲まれたペルシャ湾の小さな島国。
国土は東京23区より少し小さいくらいですが、「中東の金融・観光都市」として発展しています。
かつては「真珠の産地」として世界的に有名で、今も市場(スーク)には金細工や真珠、香辛料が並び、
異国情緒あふれる景色が広がっています。
イスラム文化を大切にしながらも、外国人にも開かれた空気があり、
「世界一美しいモスク」ともいわれる アル・ファティフ・モスク も観光スポットとして人気です。
旅行者への注意点も忘れずに
そんな魅力的なバーレーンですが、近年は+973を使った国際詐欺電話も報告されています。
知らない番号には出ない・折り返さない。
この基本は、どの国からの電話でも大切ですね。
また、実際に訪れる際には、情勢や渡航情報を事前にしっかり確認することもお忘れなく。
ふと思い出した、あの方のこと
今から25年以上前、私がまだ若かった20代の頃です。
ある取引先の所長さんに、バーレーンをとても勧められたことがありました。
「バーレーンは本当にいいところだよ」
いつも穏やかで、知的で、インテリジェンスあふれるその方は、
決して派手ではありませんが、
静かに、確かな言葉で人に寄り添ってくださるような、そんな大人の品格を持った方でした。
仕事で訪問したある日、「気分転換にどうですか?」とビジネスランチに誘っていただきました。
明るい日差しの展望のよいレストランでご自身の余命と病名をお伝え下さいました。
その後、担当者としてお供し、お城に一緒に登ったことがありました。
すでにご病気が進んでおられ、最後に挑戦したいんだというお気持ちであられたと思います。
しかし、そんなそぶりは一切見せず、「しんどい」や「辛い」なんて、ひと言も言われませんでした。
あの方は小柄で、とても痩せておられ、かなりのヘビースモーカー。
訪問する毎にあの方の咳がひどくなっておられたので、大丈夫ですかとの声掛けがお決まりになっていたというのも思い出の場面です。
大きな優しさと、強さを秘めた方ででした。
自分らしい旅立ち
その後、訃報を受け、取引先として葬儀に参列した日。
棺には、バーレーンの民族衣装をまとわれたその方のお姿。
流れていた音楽も、バーレーンのものでした。とても不思議な雰囲気に包まれた葬儀場。式の内容はお兄様にご希望を託されたと伺い知りました。
「自分らしく旅立つ」
そんな姿を、静かに、力強く見せてくださったと思いました。その清廉なお姿に衝撃を受けました。当時そのように個性的なお別れの式は芸能人でもない限り大変に珍しかったせいもありました。私は思わず、ただの一取引先という立場だったのにもかかわらず、声をあげておいおいと人目をはばからず号泣してしまったのでした。人様のお別れでそこまで号泣したことは、あとにも先にも記憶にありません。
つながりは消えない
あれからかなりの月日が流れ、ふと目にした「+973」の番号。
もう誰からの着信かはわかりませんが、
私はあの日のこと、あの方のことを思い出しました。
今も、どこかで
「思い出してごらん」と
そっと背中を押してくださったのかもしれません。
あの方の記憶は、今も私の中で、
静かに生き続けています。
バーレーンという国と、
あの方の優しさと強さに、改めて心から感謝を込めて。