ロシアの研究者レフ・ヴィゴツキー(1896–1934)は、
1920年代のソビエトにおいて、人の発達と教育の関係を分析した。
その中で提示されたのが、
Zone of Proximal Development(ZPD)
ロシア語でいうと、 зона ближайшего развития
である。
直訳すると「最も近い発達の領域」を意味し、
現在の能力と、支援によって到達可能な能力のあいだに存在する範囲を指す。
この理論では、人の能力は少なくとも三層で考えられる。
- 一人でできること
- 支援があればできること(ZPD)
- 支援があってもできないこと
教育や指導が機能するのは、主に二番目の領域である。
この考え方は現在でも教育学の基礎理論として使われており、
「スキャフォールディング(足場かけ)」という形で発展している。
段階的に支援を与え、最終的に自立へ導く方法である。
ただし、この理論は「どこまで支援が有効か」を示すものであり、
その先に進むかどうかは別の問題である。
現場では、
知識や方法は外から補える。
理解もある程度は支えられる。
しかしその先にある、
- 自分で決めること
- 継続すること
- 引き受けること
といった領域に入ると、外部からは越えられない。
したがって、
同じところで止まっているのではなく、
別の層で止まっていると見るほうが正確である。
結果として、
進み続ける人と止まる人が分かれる。
これは評価ではなく、構造である。
最後に、少しだけ単純に言えば、
「ここまでは押せば進むが、その先で歩くかどうかは本人次第」
という話になる。


